結婚式や各種式典など、遠方から来てくれた方に渡す「お車代」。
実は、金額だけでなく「どんな封筒を使うか」「名前の書き方はどうするか」など、意外と細かなマナーがあることをご存じですか?
この記事では、
- お車代の意味、使い方
- 表書きの正しい書き方や封筒の種類
- 渡すときのマナーや気を付けたいポイント
以上の3点について、わかりやすく解説します。
この記事を読めば、「ちゃんと失礼なく渡せたかな?」と不安になることなく、自信を持ってお車代を用意できますよ。
お車代とは?意味と使い方
「お車代」という言葉は聞いたことがあっても、実際にどんな意味で、どのようなシーンで使われるのかは、意外とあいまいなもの。
まずは基本に立ち返って、「お車代とは何か」を改めて確認しておきましょう。気になる相場感や誰に渡すものなのか、どんな場面で必要になるのかもあわせて解説します。
お車代が必要な主な場面とシーン
お車代とは、もともと遠方から来てもらった相手に対して、交通費の一部または全額を負担する目的で渡す金銭のことです。現在では「実費の補助」に加えて「来てもらったことへの感謝」を表す意味合いでも広く使われています。
結婚式に限らず、冠婚葬祭や仕事上の行事など、フォーマルな場面で用いられることが多く、相手への配慮や礼儀として根付いている習慣です。
お車代が必要になる主なシーンには、以下のようなものがあります。
- 結婚式で遠方から招待したゲストへの交通費・宿泊費の補助
- 仲人や主賓、司会者など特別な立場の方へのお礼も兼ねた金銭
- 葬儀や法要で、僧侶や遠方から来てくれた親族への移動費補助
- 講演会や式典などに出席してもらうゲストへの謝礼とは別の交通費
- 付き添いや案内をお願いした際の、気遣いとしての心付け
いずれの場合も、金額よりも「気遣いの気持ち」が大切とされ、状況に応じた対応が求められます。
お車代の金額相場はいくら?
お車代の金額は、「どのくらい遠方から来てもらうか」「どんな立場の人か」によって変わります。あくまで目安としての相場はありますが正解がひとつに決まっているわけではなく「実費+感謝の気持ち」が反映された金額であることが大切です。
<結婚式の場合の相場>
新幹線や飛行機を利用する遠方ゲスト | 1万円~3万円 (実際の交通費に応じて全額または半額を負担するケースが多い) |
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宿泊が必要な場合 | 別途1万円程度+宿泊手配 (手配済みのホテルを用意することもあれば、宿泊費を現金で渡すことも) |
主賓・上司・仲人など | 1万~3万円+α(お礼の意味を含む) |
司会・演奏などを依頼したゲスト | 5千~1万円+謝礼とは別に渡す |
お車代の負担方法は主に「全額負担」と「半額負担」に分かれます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 全額負担:特に来てほしい人や、上司・恩師などの目上の方、交通費が高額になるゲストに対して選ばれることが多い。
感謝や敬意の気持ちを込めたい場合に適した対応。 - 半額負担:友人や同僚など、比較的カジュアルな関係のゲストに対して選ばれるケースが一般的。
新郎新婦側の費用を抑えつつ、ゲストへの配慮もできる方法。
なお、どちらを選ぶかはゲストとの関係性や、交通費の負担額などに応じて柔軟に判断するのがおすすめです。
<その他のシーンの目安>
法事・葬儀 | 5千~1万円程度(僧侶や遠方の親族) 「御車料」や「御礼」として包むのが一般的 |
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講演・式典 | 実費分+α(1万円前後が多い) |
お車代の金額について意識したいのは「実費を調べてぴったり払う」よりも「失礼のない金額かどうか」「相手に気を使わせすぎていないか」のバランスです。
迷ったら「多すぎず、少なすぎず」で1万円を基準に考えてみましょう。
お車代と心付け・お礼はどう違う?
「お車代」と似た言葉に、「心付け」や「お礼」がありますが、これらは意味も渡すタイミングも少しずつ異なります。
- 心付け
式場スタッフや美容師などに、感謝の気持ちを込めたちょっとした謝礼・ご挨拶代。
結婚式開始前や、終了後にさりげなく渡すもの。 - お礼
何かしらの依頼や役割を引き受けてもらったことへの対価・謝礼。
司会者や受付、講演に招いた講師などに用意するもので、終了後の落ち着いたタイミングで渡す。
すべて“感謝の気持ちを形にしたもの”という点では共通していますが、それぞれの役割を正しく理解しておくことが、より丁寧なおもてなしにつながります。
封筒の種類はどう選ぶべき?
お車代を包む封筒は、金額や相手との関係性、シーンによって使い分けるのがマナーです。主に使われるのは、「のし袋」「白封筒」「ポチ袋」の3種類です。
それぞれの特徴とおすすめの使い方を以下にまとめました。
- のし袋(紅白の水引付き)
目上の方や主賓、仲人など、改まった相手に。
金額が1万円以上になる場合にも使う。
水引が印刷されたタイプは封筒が薄く運びやすいため、気軽なやり取りやカジュアルなゲスト向け。
本物の水引付き封筒はよりフォーマルな印象を持ちたい目上の方、主賓などに選ぶと◎ - 白封筒(無地)
少額のお車代や、カジュアルな間柄のゲストに。
水引や飾りのない、清潔感ある封筒を選ぶ。 - ポチ袋(シンプルな和柄や無地)
5千円以下の少額や、若いゲスト・友人向け。
子どもゲストに渡すこともあるが、華美すぎるデザインやキャラ物は避ける。
なお、結婚式では「慶事用の紅白水引」、葬儀や法事では「弔事用の白黒や双銀水引」など、シーンに合わせたデザインと色の使い分けも大切です。
表書きの使い分け方と注意点
封筒の表面には、用途に応じた表書きを記すのが基本です。「御車代」以外にもいくつかの表現があり、渡す相手や場面によって使い分ける必要があります。
結婚式など慶事の場面で使う表書きの例:
- 御車代:主に交通費を補助する場合。遠方ゲストや主賓、仲人などへ。
- 御礼:司会や演奏など、役割を依頼したゲストへの感謝として。
- 寿:親族などに対して、祝い事として渡す際に使う表現。
葬儀や法事など弔事の場面で使う表書き:
- 御車料:僧侶や遠方から来た弔問客への交通費補助。
- 御礼:読経・法話をお願いした僧侶などへの謝礼として。
表書きは毛筆または筆ペンを使い、楷書でていねいに書くのがマナーです。
また、「お車代」や「お礼」といったひらがな表記と迷う方も多いのですが、「御車代」「御礼」など漢字表記でも構いません。
お車代封筒の正しい書き方
いざお車代を渡すとき「どうやって書けばいいの?」と悩んだことはありませんか?
表書きのレイアウト、名前の書き方、中袋の有無、ペンの選び方など、意外と細かいポイントが多く、不安になる人も少なくありません。
ここでは、書き方を中心に、お車代封筒の正しい書き方を順を追ってくわしく解説します。
表書きの基本マナーとレイアウト
お車代封筒の表面には、中央に「お車代」や「御車代」、「御礼」といった表書きを縦書きで記すのが基本です。
文字はできるだけ丁寧に、毛筆や筆ペン、万年筆などを使って書くと、よりフォーマルな印象になります。
また、封筒のデザインによってはあらかじめ表書きが印刷されているものもあり、その場合は空いている下のスペースに名前を加えればOKです。
表書きの下部には、贈り主の名前を書きます。
結婚式の場合は、基本的に新郎側のゲストなら新郎の名字、新婦側のゲストなら新婦の旧姓を記載します。
新郎新婦どちらとも付き合いのあるゲストに渡す場合は、両家連名で記載しましょう。
また、結婚式当日ではなく後日渡すような場合は、新しい名字のみを使います。


いずれの場合も、大切なのは「相手に失礼がないように」という気持ちを込めて整えることです。見た目の整え方より、誠意を伝える姿勢をぜひ意識してみましょう。
裏面の書き方と自分の名前の入れ方
結婚式の場合のお車代封筒の裏面には、基本的には何も書きません。
御車代はお礼の名目でお渡ししているものなので、お返しの必要がないためと言われています。
また、弔事で渡す御車代には、氏名や住所を書く場合もありますが、宗派によって異なるので準備する際に確認しておくとよいでしょう。
中袋は必要?金額別の正しい選び方
お車代を包むとき、中袋を使うかどうかは金額や封筒の形式によって判断します。
のし袋を使用する場合は、中袋が付属していることが多く、そのまま使用して問題ありません。特に1万円以上の金額を包む場合には中袋を使うのが一般的です。
一方、白封筒やポチ袋など簡易的な封筒を使う場合は、中袋がなくても失礼にはあたりません。
ペンの選び方と綺麗に書くコツ
封筒や中袋の記入には、筆ペンや万年筆、黒のボールペンなどがよく使われます。もっとも正式なのは毛筆や筆ペンですが、扱い方が難しい筆です。使い慣れていない場合は、丁寧に書けるペンを選んでみましょう。
おすすめは、にじみにくく細字の筆ペンや、油性の黒ボールペン。マットな紙質の封筒には、インクの乾きやすさもチェックしておくと安心です。
表書きや名前を書くときは、事前に下書きをしてレイアウトを整えると、バランスよく見えます。定規や薄い鉛筆でガイドラインを引いてから記入し、乾いてから消すと失敗しにくくなります。
大切なのは、文字の上手さではなく、「丁寧に書こう」という気持ちが伝わるかどうか。少しの工夫で、印象は大きく変わります。
結婚式でのお車代封筒の書き方と渡し方
ここからは、実際に結婚式でお車代を用意・手渡しする場面でのマナーについて解説します。
結婚式特有の表現ルールや、渡す相手による対応の違い、当日のタイミング、声のかけ方まで、気をつけたいポイントは意外と多くあります。
この項目をチェックしておくと「失礼がないかな?」と不安になることなく、当日も安心してお車代を用意できます。
結婚式特有の表書き表現とマナー
結婚式で使用するお車代の封筒には、慶事にふさわしい表現やマナーがあります。
表書きには「御車代」または「お車代」と記すのが一般的ですが、「寿」や「御礼」などの表記も、渡す相手や目的によって使い分けることがあります。
たとえば、新郎新婦から親族へ気持ちとして渡す場合は「寿」、司会や受付などを頼んだゲストには「御礼」を使うことが多いです。
それぞれ感謝や敬意を示す表現を選ぶことで、より丁寧な印象になります。
また、水引は「紅白」の結び切りを選びましょう。
親族・主賓・一般ゲストへの渡し方の違い
お車代は、渡す相手によってマナーや対応の仕方が少しずつ異なります。
基本的に親族や目上の方にはより丁寧な形式で、カジュアルな関係のゲストには丁寧すぎる形式だとかえって「かしこまりすぎた印象」になるため、簡潔なやり取りでも失礼にはなりません。
以下に渡し方の違いをまとめました。
- 主賓・上司・仲人など:受付で渡すのではなく、新郎新婦や親族が直接手渡すのが理想です。
事前に控室でお礼の言葉と共に渡すこともあります。 - 親族:両親や親族代表がまとめて手渡すケースが多く、当日よりも前日のうちに渡すこともあります。
- 一般ゲスト:受付でスタッフや係の人から渡すスタイルが一般的です。
誰に渡したか管理できるよう、リストを用意しておくと安心です。
当日渡すタイミングと気をつけたい言葉
お車代は、できるだけゲストが帰る前や式が始まる前の落ち着いたタイミングで渡すのが理想です。
主賓や仲人には、挨拶のタイミングで直接手渡しを。一般ゲストには受付でスタッフを通じて渡すケースが一般的です。
声をかけるときは、さりげなく感謝を伝える言葉を選ぶことが大切です。
たとえば「本日は遠方からありがとうございます。ささやかですが、交通費の一部としてお納めください」のようなやわらかい表現がおすすめです。
一方で、結婚式では「切れる」「返す」「忙しい」などの忌み言葉は避けましょう。「お車代を返します」「お忙しいところすみません」などは使わず、「お受け取りください」「ご足労いただきありがとうございます」といった言い換えを意識すると、より丁寧な印象になります。
また、袱紗や小さな封筒に包み、中身が見えないように渡すとスマートです。
お札の向きや枚数に決まりはある?
お車代に入れるお札は、新札(できるだけきれいなもの)を用意するのが基本です。しわや折れのあるお札は避け、丁寧に扱うことで相手への敬意を示しましょう。
封筒に入れる際は、表面(人物の顔)が上になるようにし、顔が封筒の上側に向くように入れるのがマナーです。これは、お祝い事におけるお金の入れ方として一般的な作法です。
また、金額に応じた適切な枚数も意識したいポイント。たとえば1万円を渡す場合は1枚で、1万5千円の場合は千円札5枚ではなく、5千円札を使うなど見た目を整える配慮があるとより丁寧な印象になります。
細かいルールにとらわれすぎる必要はありませんが、「受け取ったときにきれいに感じるか」を意識して包むのがコツです。
ポチ袋で代用しても大丈夫?
お車代の封筒に、ポチ袋を使っても問題ありません。
特に金額が少額の場合(5,000円以下など)や、友人や親しい間柄のゲストに渡す場合には、シンプルなポチ袋で十分です。
ただし、結婚式というフォーマルな場では、華美すぎるデザインやキャラクターもの、カジュアルすぎる柄は避けるのがマナー。白や淡い色合いの和柄、無地のものなど、上品で落ち着いたデザインを選ぶと安心です。
また、金額が1万円以上になる場合や、目上の方・主賓クラスのゲストに渡す際は、ポチ袋ではなくのし袋や白封筒を選ぶほうが無難です。
大切なのは封筒の種類よりも、「相手への配慮が伝わるかどうか」です。状況に応じて丁寧に使い分けましょう。
葬儀や法事でのお車代の書き方の違い
お車代は、結婚式だけでなく、葬儀や法事など弔事の場面でも使われます。
この場合、表書きや封筒の種類など、慶事とは異なるマナーがあるため注意が必要です。
まず封筒は、白黒や双銀の水引が付いた不祝儀袋を選びます。水引は結び切りで、落ち着いた素材のものを選びましょう。
表書きは「御車代」ではなく、「御車料」や「御礼」と記すのが一般的です。僧侶への謝礼には「御布施」、読経の後に渡す交通費には「御車料」が使われることもあります。
中袋には、表面に金額、裏面に住所と氏名を縦書きで記入するのが正式とされていますが、宗派によって異なる場合があるので、確認が必要です。
また、弔事では「準備していたものではない」という意味合いから、新札は避けて使用感のあるお札を使うのがマナーです。どうしても新札しか用意できない場合は、折り目をつけてから包むと失礼にあたりません。
まとめ
お車代は、ただ交通費を渡すだけでなく、相手への感謝やおもてなしの気持ちを伝えるための大切なマナーのひとつです。
封筒の種類や表書き、中袋の使い方、渡し方のタイミングなど、細かなポイントを押さえておくことで、当日も安心してゲストを迎えられます。
この記事を参考に、状況や相手に応じた形でお車代を準備し、自信を持って気持ちを伝えてみてくださいね。
よくある質問
お車代の封筒に名前は書きますか?
通常、ご祝儀袋についている中袋や、封筒の裏面には名前や金額を記載しますが、御車代はお礼の意味合いを込めて渡すものなので、何も書かないで良いとされています。
お車代を封筒に入れるときのしに何と書きますか?
一般的には「御車代」または「お車代」と記します。
ただし、役割をお願いしたゲストには「御礼」、親族には「寿」など、相手に合わせて表書きを使い分けましょう。